背番号4番、度会隆輝選手はやはり裏切らない男だ。
2026年10月8日の阪神vsヤクルト戦を最後に、セントラルリーグの全日程が終了した。
打撃成績では、阪神の佐藤選手が初の三冠王になったが、レギュラーシーズン中盤からは常に打撃部門(打率)でTop5に顔を出していた度会選手がいた。終わってみれば、牧選手と度会選手が打率部門で6位と8位となった。
<度会選手 最終成績(2026年)>
背番号4番、度会隆輝選手:試合数134試合、通算471打数、129安打、51打点、本塁打:9本、打率:.2738(セリーグ打撃成績第八位)
私はこの一年、度会選手を追いかけ、コラムでも彼を「期待を裏切らない男」として紹介してきた。もちろん、いつも期待どおりの結果が出るわけではない。それでも、ファンの心をつかみ、何かをやってくれるのではないかと思わせる。そんな魅力を持った選手だ。
そして、クライマックスシリーズで、彼は我々の期待以上の仕事をやってのけた。
度会選手の記憶に残る2発のホームラン
●2026年10月10日(土曜)、クライマックスシリーズファーストステージ第1戦 巨人戦
●2026年10月11日(日曜)、クライマックスシリーズファーストステージ第2戦 巨人戦
きりりと張り詰めた緊張感。負ければ終わりのクライマックスシリーズが始まった。
シーズンを3位で終えた横浜DeNAベイスターズ。日本シリーズへの道を切り開くために、一戦も落とせない戦いが続く。「ヨ・ミ・ウ・リ、倒せ!絶対勝つぞ!ベイスターズ!」のファンの声援も後押しする。
その舞台で、またしても期待を裏切らない男がやってくれた。
背番号4番、度会隆輝。
初戦。巨人の先発は、井上投手。ベイスターズは、エースの東投手。両チームの先発投手が踏ん張り、なかなか点が入らない緊迫した投手戦となった。もともと、井上投手は、ベイスターズにとって天敵の投手。ほとんど打てないのだ。それでも、1回にソロホームランで出鼻をくじいたのが牧選手だった。ただ、その後は、井上投手にぴしゃりと抑えられるベイスターズナイン。ほぼベイスターズの追加得点の期待はできない中、東投手もチャンスは作られるものの、7回を1失点で、何とか踏ん張った。
息を詰めて見守る展開のなか、1対1で迎えた9回表、最後に試合を動かしたのは度会選手だった。相手の守護神マルティネス投手が投げた高めの速球を、右中間スタンドへ。勝ち越しの値千金のソロホームランだ。度会選手は、そこまで、3打数無安打。仲のいい戸柱選手から、「本能で行ってこい!」と声をかけられたとのこと。勝負所で出た会心の当たりになった。
打った本人も驚いたのだろうか、塁を回りながら、興奮のあまり、何度もガッツポーズが飛び出す。その姿からは、抑えきれない喜びがあふれていた。
その後のクライマックスシリーズでのベイスターズの快進撃は、まさにこの度会選手の1発から始まったといっても過言ではない。9回裏は、レイノルズ投手がその貴重な勝ち越しの1点を守り切り逃げ切った。
そして迎えた第2戦。巨人は、ルーキーの竹丸投手。ベイスターズは、石田投手。昨日の余韻が冷めやらぬ中、またもや、度会選手の、今度は先頭打者ホームランで試合の幕を開けたのだ。初戦に続く、2打席連続のホームランである。続く牧選手も二塁打を放ち、佐野選手の2点目のタイムリーにつながった。
この日も、横浜スタジアムでは、ほぼ内野席を満席にする約2万3千人のファンがパブリックビューイングに集まり、東京ドームのチームに声援を送った。スタンドを埋め尽くしたファンの期待と興奮。その熱気のなかで、度会選手の一発は、ベイスターズが勝利へ向かう勢いをさらに加速させ、横浜スタジアムをいっそう盛り上がらせた。
度会の緊張と平常心
「期待を裏切らない男」が、一年をかけてつかんだもの
度会選手は、ただ勢いに乗って打っているだけなのだろうか。
私は、この一年の彼を見てきたからこそ、そうではないと思いたい。
シーズンを通じて、打てる日もあれば、思うようにいかない日もあったはずだ。期待される若手だからこそ、結果を求められる。明るく、屈託のない表情を見せる彼にも、打てなかった日の悔しさや、思いどおりにならない自分へのもどかしさがあったのではないだろうか。
もちろん、それは本人に聞いてみなければわからない。
だが、グラウンドで見せる明るさの裏側で、誰にも見せずに悩み、考え、バットを振り続けてきたのだとしたら。よく報道される、鈴木尚典コーチとの二人三脚での打撃練習で特訓を受けているという事。そうした一日一日の積み重ねが、ここ一番の集中力を生み出しているのかもしれない。
緊張する場面で、緊張しない人間などいないだろう。ただ、バッターボックスに立った度会選手の表情からは、緊張という事を微塵も感じさせない、いつも澄んだ顔をしていた。大切なのは、緊張をなくすことではなく、緊張のなかでも自分の力を発揮できることだ。
度会選手は、この一年で、そこに大きく近づいたのではないだろうか。
シーズンを通じて実力を積み上げ、レギュラーの座をつかむ。そして、チームの命運がかかるポストシーズンで、さらに大きな仕事をする。
それは、彼が一発のホームランで見せた輝きだけではない。一年をかけて積み上げてきたものが、最も大切な舞台で形になり始めたということなのだと思う。
まだ若い。これから身につけるべきものも、乗り越えるべき壁もあるだろう。
それでも、将来、首位打者を狙える選手になってほしい。クリーンナップを打てる選手になってほしい。そう期待させるだけの可能性を、彼はこの一年で見せてくれた。このクライマックスシリーズでも見せてくれた。
そして、舞台は日本シリーズへ。
ここまで期待を裏切らず、いや、期待を超える働きを見せてくれた度会選手に、最後にもう一度、大きな期待を寄せたい。
日本シリーズでも、きっと何かをやってくれる。
期待を裏切らない男になった、度会隆輝。
そのバットが、横浜のファンを歓喜の渦に巻き込む瞬間を、我々は楽しみに待っている。

